放射能の雨の中を新聞配達し、放射能の雨に当たったのではないかという不安を抱えながらも、学校にたどり着きました。その日はたまたま体育館で全校生徒の集会がある日でした。
実は、わたしと同じクラスに同じように新聞配達をしている同級生が一人いました。同じように新聞配達をしているのですが、特に仲がいいというわけではなく、たまに声を掛け合う程度でした。
わたし達二人に共通したところは健康で体力があるというところです。
雨が降っているため、閉め切った体育館で行われました。この集会は全員が立ったままです。こういった朝礼ではだいたい同じ生徒が
「先生〜、気分が悪くなりました。」
と、全校生徒の注目を浴びることになります。しかしこの日はいつもと違いました。
わたしの近くで「バタンッ!!」と誰かが倒れる音がしたのです。一瞬、体育館がシーンとなり、全校生徒が音のした場所を探し出しました。
わたしも「倒れたのは誰だろう?」と探してみると、なんと、同じクラスのもう一人の新聞配達をしている同級生だったのです。
「なんで?あいつは貧血を起こすような奴じゃない。なんで倒れたんだ?
ひょっとして、あいつは今朝の新聞配達で、放射能の雨に当たったんじゃないか。」
それからわたしの頭の中は不安でいっぱいになりました。同じ新聞配達している同級生が倒れた。倒れたと言う事実。
「きっと放射能の雨に当たったからだ。俺も少しだけど、当たった。ということは俺も倒れるかもしれない・・・」
数分後・・・。
わたしは保健室のベッドに横たわっていました。何が起こったのかはいまだに憶えていません。突然、視界が狭くなり、立ってはいられない状態になったとだけは、かすかに憶えているのですが・・・。
ふと、気がつくとわたしの横のベッドには、先ほど倒れた同級生がいます。その同級生もわたしに気がついたらしく、わたしから声を掛けました。
わたし:
「大丈夫か?」
同級生:「うん。はしもと君は?」
わたし:
「俺は大丈夫。やっぱり、今朝の放射能の雨が原因かな?
新聞配達の時に放射能の雨に当たったんか?」
同級生:「え?何を言ってるの?昨日から体調が悪くて、
晩ごはんも朝ごはんも食べてないから倒れちゃった。」
わたし:
「えっ!?今朝の新聞配達は?」
同級生:「休んだよ。」
そうなのです。同級生が倒れたことと、放射能の雨との因果関係はまったくなかったのです。つまり、
わたしは自分で勝手に同級生が放射能の雨に打たれたから倒れたものだと思い込み、そして自分も倒れたのです。
この出来事はまさに気持ちが体調を変化させたことを物語っています。誰もがこのような経験をしたことがあるはずです。倒れるほどの経験はないとしても、普段の生活の中にいくらでも経験することができます。
例えば、大勢の人の前で話をしなくてはならないときに、緊張のあまり「オエッ」と嗚咽を起こしたりするのもそうです。
また車を運転している時に突然、子どもが飛び出してきて、急ブレーキで間一髪、事なきを得たときに、気が付いたら手の平に汗をかいたということもそうです。
気持ちが体調を変化させるということは誰でも知らずのうちに経験している事なので、特別びっくりするようなことではないかもしれません。
しかしながらここでもう一度、気持ちが体調を変化させるということを考えてみてください。あなたはこのことについてどのように思いますか?
質問していながら何なのですが、何とも思わないのではないでしょうか?わたしも糖尿病になる前まではなんとも思わなかったのです。しかし、糖尿病になったわたしはこの現象について深く考えなければならないと感じています。
それは・・・、
気持ちが体調を変化させることを説明するために例に出したのは「倒れる」「嗚咽をする」「汗をかく」というものでした。これらに共通していることは体調の変化が分かりやすい、すなわち症状が目にみえるということです。
逆に症状が目に見えるから、それに対して予防することができるのです。緊張のあまり「嗚咽をする」なら緊張しない方法をカウンセラーに相談したり、また子どもが突然、出てきそうな場所を運転する時は徐行運転をすることによって予防できます。
ここで思い出してください。糖尿病には自覚症状がありません。さらに血糖値を下げるインシュリンを分泌するすい臓も胃のように痛みません。これはどういうことを意味するのか?
気持ちによって、すい臓が何らかのダメージを受け、インシュリンの分泌が悪くなっていたとしても、すい臓は痛まないため、そのことに気づきません。
さらにインシュリンの分泌が悪くなったことによって、血糖値が高くなったとしても、血糖値が高いという自覚症状はないため、血糖値が高い状態が続いて、そして糖尿病になってしまうのです。
「気持ちによって血糖値が上がってもそれに気づかずに体調が悪化する」
ここから
「精神と糖尿病には因果関係がある」
ということを、どうしても伝えたいのです。そしてこのことを軽く考えてはいけないと思っています。
「それがどうした?」、「そんなん、知っているわ!!」と思っているかもしれません。では、どれだけ、糖尿病と精神が深く・直接的に関係しているということを認識しているでしょうか?
後でこのことについてわたしが経験したことをお話し、確かに精神が糖尿病と深く・直接的な因果関係があるということを知ってもらおうと思っていますので、いまの段階では、軽く考えてはいけないということだけを頭の片隅においてください。
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