わたしは社会人になり、いろいろな人と出会い、いろいろな経験・失敗を繰り返しながら、非常に充実した社会人人生を送っていました。
もともと、いろんなことに興味があり、それを満たしてくれる職業はないかと探していました。そのなかでそれを満たしてくれる職業としてシステムエンジニアに焦点を絞ったのです。
システムエンジニアは思ったとおり「いろんなことを知りたい」というわたしの欲求を満たしてくれました。いろんな業界のいろんな話を聞けて、ときにはシステムに関する相談を受けたりと、自分の知識・経験を積めば積むほど、クライアントに喜ばれ、頼りにされるやりがいのある仕事でした。
実際、わたしは入社してから1年単位で東京・大阪を異動になり、いろいろな仕事をしていました。周囲の人からは「なんでそんなに転々としなければあかんの?可愛そうやな〜」と言われた事も多々あるのですが、当時のわたしは「何、言ってるんやろ?俺は自分を大きくするために経験を積んでるんやで。こんな嬉しい事はあれへんで」と思っていました。
会社もそんなわたしの希望に応えてくれて、いろんな仕事をさせてくれました。その当時のわたしは規則正しく定時で帰宅する事は悪で、会社の中で最後まで働いている自分の姿に酔っていました。
しかし、ある日、事件は突然起こったのです。横浜で働いているわたしに実家の母親から突如、電話があったのです。普段なら電話があるのは休日かもしくは夜間。それが平日のしかもしかも午前8時半にあったのです。
母からの電話が鳴った瞬間にこれは何かあったのだと直感しました。
わたし:「もしもし」
母 親:「ごめん、仕事中やろ?」
わたし:「ちょうど、会社に着いたところや。ところでどうしたん?」
母 親:「お父さんが、倒れてん。いま意識不明やって・・・」
父親は仕事の関係でわたし以上にあちこちを点々としていました。倒れた場所は沖縄。3日前に父親と、これから沖縄に行くという内容の電話をしたばかりです。すぐさま会社を休んで沖縄に向かいました。
そして、父親が倒れた病院に到着。そこには・・・
そこにはわたしのことが分からない父親がいました。
「なんでやねん!!!!」それ以外に言葉はありません。28歳の冬の出来事でした。
父親は脳梗塞で倒れたのです。同僚の話によると、一緒に泊まっていた民宿で、父親に呼ばれ、父親の部屋に行くと、「ワイシャツのボタンが留められへんねん。」という話をした直後に意識を失い、倒れたそうです。
病院の先生からは「手術をしないとさらに病状が悪化します。その手術は病状を回復させるためではなく、さらに血管が詰まって病状が悪化するのを防ぐための手術です。」という事を告げられました。
沖縄には身寄りがまったくいないため、飛行機に乗って大阪の病院に転院できるようになるまでは沖縄の病院で回復を待つことにしました。
一緒にいた同僚から父親が乗っていた車は鹿児島空港に停めてあるという事を聞き、回復しないのならわたしが大阪までもって帰らなければと、病状が安定してきた父親を沖縄の病院に残して、鹿児島に向かいました。
鹿児島空港の駐車場には確かに父親の車がありました。少し前まではこの車を運転して、ここに停めて、そして沖縄に向かった。その父親はいまは・・・。
車の中にはわたしが高校時代の家族全員の写真が置いてありました。その事を思い出すといまでも辛くなります。さらにダッシュボードの中を探ってみるとひとつの封筒を見つけました。その封筒には××病院という文字が刻まれていました。
その封筒には診断書が入っていました。その診断書が書かれた日付は3年前のものでした。そこには
「糖尿病の疑いがあります。至急、検査を実施して、治療を開始してください」
そうなのです。父親は糖尿病を放置し、そして合併症の脳梗塞で倒れたのです。
それを知ったわたしは、「なぜ、病院に行って検査をしなかったのか!!」と何ともやりきれない気持ちでいっぱいでした。
確かに父親は「俺は小さいときから病気になったことはない」というほど、健康な人でした。事実、わたしは65歳の父親が倒れる28歳まで、父親が風邪などの病気をしたという記憶がまったくありません。
それが、父親自身の病気に対する認識を甘くさせ、病院で検査するという行動を起させなかったのです。
その後、父親は2度の手術を行い、一生懸命にリハビリを繰り返し、いまでは左半身に障害が残っているものの元気に過ごしています。しかし介護なしではひとりで生活を送ることはできません。
ちなみにこの出来事があっても、わたしと糖尿病が結びつくなんて少しも思っていませんでした。この時点では自分がかかるだろうと思われる病気の中に「糖尿病」と言うものは存在していませんでした。
しかし、この2年後に糖尿病になってしまうのですが・・・。
糖尿病は自覚症状が出たらアウト。そうなる前に事前にチェック。
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